事実は小説より奇なり―詩人ジョージ・ゴードン・バイロンの言である。
7月4日、神戸の地にて行われた5代目赤王防衛戦。この場に居合わせた者たちほど、この言葉の意味を実感した者はいないであろう。
昨年秋、東京での初防衛戦に危なげなく勝利し、史上最強の赤王との呼び声高い“名古屋の赤竜”はっちよ陛下。陛下でありながら常に下々の者を気遣い、イベント会場周辺のコンビニ情報にまで精通する庶民派赤王である。
その冠を狙い、前哨戦となる「赤王ランブル」に本選そっちのけで猛者たちが集う。激戦の中、最多勝利を挙げ挑戦権を手にした男の名が高らかに呼び上げられた瞬間…会場がどよめいた。
その男の名は、ぺぺと言った。

3代目赤王として、かつて栄華を極めた男がそこにいた。4代目との戦いに敗れ冠を献上した男は、己の力のみで再びこの舞台に這い上がってきた。その瞳はあの頃と同じく、紅蓮の炎を宿していた。
「私が最強の赤王であることを証明する」
ぺぺが力強く宣戦布告。
「老人の時代は終わった」
今までに無い鋭い言葉で切り捨てるはっちよ陛下。

いつの間にか観戦席の最前列に陣取っていた初代赤王。ジャッジYシャツを着込んだ2代目と4代目がマイクで解説を添える。歴代赤王たちが見守る中、3代目と5代目の誇りを賭けた戦いが幕を開けた。
序盤はベースを揃えることに専念する両者。勝負は中盤から、壮絶な殲滅戦の様相となる。
片方が「融解戦鬼灼熱王」をプレイすれば、まけじと相手も「灼熱王」で踏み返す。片方が「ステルス・スナイパー」でユニットを焼いてくれば、負けじと相手も「ステルス」で焼き返す。そして墓地からデッキに戻った「ステルス」が、すぐさま再度爆炎を飛ばす。中盤は息を飲むようなステルス合戦であった。

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「彼らのステルスには“団結”と書いてあるのではないかね?」思わずそう呟いてしまうくらいに、デッキに戻るたびに的確なタイミングでプランに登場する「ステルス」。
それもそのはず、ここは赤に見入られ、赤に生き、赤と共に散る漢たちの戦場である。
彼らの魂にプランが応えた。それだけのことだ。
勝負が動いたのは、山札が残り一ケタとなった終盤であった。
切り込み隊長の「機神兵ラセツ」を、急襲を使わずに前進させる挑戦者。当然はっちよ陛下は「灼熱王」でブロックに向かう。バトルに入ったことを確認すると、挑戦者は静かにベースを3枚フリーズした。
「ブレェェイブゥ・スパァァクッッッ!!!!!!」
最後の「灼熱王」が焼け落ち、はっちよ陛下に「ラセツ」を止める術はない。力強くスマッシュを宣言し、勝敗が決した。挑戦者ぺぺの勝利である。
こうして、史上初の「返り咲き赤王」が誕生する…はずだった。勝利のコメントを求められた挑戦者の口から出た言葉。それは、空前の赤王戦国時代の幕開けを告げるものだった。
「私が最強の赤王であることは証明できました。だがしかし、私はまだ平民たちの世界で成すべきことがあるため、この冠は…はっちよ陛下にお返ししたい」
6代目赤王への就任を辞退する、そう言ったのだ。予想外の展開に、観客も戸惑いを隠せない。
はっちよ陛下がそれに答える。
「私は一度土の味を…敗北の味を知ってしまった。一度手を離れた冠を受け取るなど、赤の誇りが許さない」
こうして、赤王の座は空位となった。次にこの冠を手にするのは誰か…それは、貴方かもしれない。
≪おまけ≫

戦いを終え、健闘を称え合う二人。
≪緊急決定!≫
前代未聞の“赤王空位”を受け、次代の赤王を決定する「全宇宙最強赤王決定戦」(仮)の開催が決定! 開催はたぶん秋くらい! その他詳細は決まり次第発表! 心して待て!