■最終幕 JINGI 決勝 〜そして伝説の大陸へ〜





幾多の苦難を乗り越え、ついに並び立つ両雄 木谷会長、創造神 中村聡。
木谷会長の脳裏に、ふと新春の関係者トーナメントの記憶がよぎる…。
「…あの時は、思いもよらない刺客に遅れをとってしまいました。ここでこうして相見える間に、僕も強くなりましたよ……。」
この一年間、数々の地を巡った「会長十番勝負」。何百戦という戦いの歴史は一朝一夕で積み上げたものではない。
「…知っていますよ、もちろん。私も開発者として、恥ずかしい戦いはできません。」
しんと静まり返る会議室。いつの間にか両雄の間に立つ進藤ジャッジ…いや、ネクタイを付け替えた「ジャッジ進藤」。
互いにフェアプレイを誓いゆっくりと席につく。
「それでは、決勝戦!始めてください!!」
ジャッジ進藤の掛け声とともに両雄が互いに睨みを効かせる。

「ワレ何処の陸のもんじゃいぃ!!!」



◆JINGI 決勝戦
クローバー 「はじめてのでぃめんしょんぜろ CHIGIRI:木谷会長
CC団「ジェネシス with 試作型-心の悲鳴が聞こえるか!?CHIGIRI:創造神 中村聡

初手。いきなり木谷会長は動く。白のエネルギーをセットしたと同時に、すぐさま自軍エリアに『グレン・リベット』をプレイ。周囲の度肝を抜く。通常『グレン・リベット』は白1でパワー4000を誇るご存知誰もが一度は使ったことのある優秀な迎撃ユニットだ。初心者講習会で初めてストラクチャーデッキを使ったプレイヤーが講習を聞きながらまず最初にやる事と言えば、この『グレン・リベット』をプレイすること。だが、ここは初心者講習会ではない。通常なら貴重な迎撃ユニットとして終始手札に握っておくのがセオリーだ。続く2ターン目もエネセットからプランでめくれたのは2枚目の『グレン・リベット』。
ここは見送って自ターンにドロー。誰もがそう思う。しかしこれもプレイ宣言。2ターン目にして『リベット』が2体、木谷会長の自軍エリアに並んでいる。

驚きを隠せない周囲。無論これには木谷会長の目算があった。
そのストーリー性ゆえに見落としがちだが、創造神の手にあるデッキ「ジェネシス with 試作型 - 心の悲鳴が聞こえるか!?」には実は高パワーのユニットが揃っている。
パワー4000の『リベット』1体で潰せるユニットはパワー3000の『バキューム・クリーナー』のみ。その他のユニットには相打ちすら取れない。もし『グレン・リベット』を手札に握っているのであれば、それは『バキューム・クリーナー』専用迎撃ユニットということになるのだ。もとよりスマッシュ値が0の『クリーナー』を神経質に迎撃する必要は無い。
そして、続くターン。木谷会長は自らの『グレン・リベット』に対し『バイオ・トラップ』を使用する。自エネルギーゾーンに送られる『グレン・リベット』。さらにもう一体の『リベット』にも『バイオ・トラップ』を使いエネルギー加速。
おお!と唸りを上げる周囲。試合運びなら神にも決して引けを取らない。
木谷会長の動きを静観し、ただじっとエネルギーを溜める創造神。プランからめくれたのは『封印された者ゼロ』。流石にまだ出ない。が、ぴたりと神の手が止まる。
木谷会長の持つ「はじめてのでぃめんしょんぜろ」はユニットの展開で押し潰すオーソドックスなビートダウン。「ユニットからダメージを受けない」『ゼロ』の能力は木谷会長にとって天敵。除去する手段はたった1枚の『ケイオス・ハンド』のみ。
「……ここはとっておきましょう」
プランを更新せず、創造神は次のドローフェイズに『ゼロ』を手札に握る。エネルギーには埋めない。

試合の趨勢をじっと観察する創造神 中村聡


中盤。右ラインに『トラフィック・コントローラー』、中央に『タクシーキャブ』を展開する創造神中村聡。ともに中央エリアまで進軍させる。しかし『トラフィック・コントローラー』と同スペックの『コテングドリアード』を正面に配置する木谷会長。相打ち狙いと見せかけ、『コテングドリアード』の進軍にスタックで『密林の孤城』をプレイし一方的に『トラフィック・コントローラー』を踏み潰しスマッシュを与える。
続けざま今度はプランからめくれた『轟く斧の乙女』を『白き聖王の門』で+3000させ、未だ中央に居座る『タクシーキャブ』を潰しにかかる。しかしそこは手札に握った『プロトタイプ・ソウル』でパンプしこれを粉砕。
一進一退の攻防とはまさにこのこと。豊富に握ったパワーアップ系ソウルをちらつかせながら『タクシーキャブ』が幅を利かせる。
「……そろそろこれを握っている余裕はなくなりました。」
ずっと機会を伺っていた『封印された者ゼロ』をエネルギーに埋める創造神。木谷会長のプレッシャーがぎりぎりの攻防を強いていく。互いに十分にエネルギーは溜まった。木谷会長の自軍中央に登場した『世界樹ユグドラシル』をすかさず『ロボット3原則』でパワーを上げ踏み潰す『タクシーキャブ』さらに空いた中央エリア中央ラインに『白の聖王の門』で登場する『ジェネシス・エンジェル』

突如中央に現れたジェネシス・エンジェル
物語は一気に終末にむけて加速する


2エネ、手札2を残し優先権を放棄する創造神中村聡。
「……ついに追い詰めましたよ、会長」
中央ラインを詰められる木谷会長。
プランをめくり現れたのは『世界樹ユグドラシル』パワーは8000。自軍に詰め寄る『タクシーキャブ』を一方的に踏み潰せるサイズ。
逡巡し勝ち筋を探る木谷会長。ぶつけるべきか。神の手札には2エネと2枚。
動きが止まる。…沈黙。
「………(パワーアップ系のストラテジーを)持ってますよね?」
「……さあ、どうでしょう。私のこの手札が何かは教えることはできません。」
そ知らぬふりを貫く創造神。じっと神の眼を睨みつける木谷会長。
「そろそろプレイをして下さい」
ジャッジ進藤の注意が飛ぶ。
二度息をつく木谷会長。
「もっている。その手札は100%持っている……!」
断言する木谷会長はプランゾーンの『世界樹ユグドラシル』を『タクシーキャブ』にではなくその横、唯一空いている自軍エリア右にプレイ。

これが勝負の分かれ目だった…。

確かにその時、創造神中村の手には『ロボット3原則』が握られていた。
勝負は次のターン。
焦らずに機会を待った木谷会長に勝利の風が吹いていた。
「お見事です。確かに握っていました」
手札の『ロボット3原則』を使用し『密林の孤城』ラインに陣取っていた『カオスビースト・ゲンブ』を潰す創造神中村聡。ここで優先権を放棄。
木谷会長の手札は1。残りエネルギーは5。
「……その手札がユニットなら、私の負けです。優先権を放棄します」
木谷会長の手が動く。
「エンド前に、『はぐれ狼スカーフェイス』を自軍エリアにプレイします」

勝負は決まった。

ユグドラシルが詰めスカーフェイスがジェネシス・エンジェルを回りこみスマッシュ4点 緑エネルギーもぴったりだった



つ いに勝利を手にし喜びを爆発させる木谷会長



「参りました」と敗れた神も晴れやかな笑顔




サークル対抗代理戦争〜ワレ何処の陸のもんじゃい〜

優勝 クローバー「はじめてのでぃめんしょんぜろ」
代理人 木谷会長


こうしてサークル対抗代理戦争はクローバーの送った魂のデッキ「はじめてのでぃめんしょんぜろ」とそのデッキのポテンシャルを最大限に引き出した木谷会長が制した。
デッキ賞はドラゴンマガジンの小説の物語をキーに、ホーリースターやバスタードなど1積みのカードが多々ある中、十二分に強さも兼ね備えたデッキ構成、あたかも試合運びを読みきっていたかのような見事なYUIGONを投稿したCC団「ジェネシス with 試作型 - 心の悲鳴が聞こえるか!?」が満場一致で選ばれた…。
優勝のクローバーとデッキ賞のCC団にはささやかな贈り物が、何れ届くであろう。
全ての試合が終わり、開放された代理人たち。
その顔には解きほぐされた緊張と程よい疲労から、自然と笑みが作られていた。

…すべてのサークルに幸あれ。







第7幕へ 終幕



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